秋の光がゆっくりと芝生を照らしはじめた朝。
fumottoの広場に集まった出店者たちは、準備の手を止めて集まった。
主催の南プス蚤の市実行委員会・藤巻さんの声が響く。
「今日、この場所から“新しい文化”をつくりましょう。」
全員集合の朝礼の拍手とともに、南プス蚤の市の一日が始まった。
出店者全員で並んで撮った集合写真は、記念というよりも“同志の証”のようだった。
ひとりひとりの表情に、「やっとここまで来た」という思いがにじんでいた。
「山梨で、本気の蚤の市を。」
南プス蚤の市の企画の中心には、藤巻さんの確かな願いがあった。
長年、古道具やアンティークの世界に携わり、全国の市を巡ってきた彼が感じていたのは、「山梨には素敵な人とモノがあるのに、“蚤の市文化”がまだ根づいていない」ということ。
そのきっかけとなったのが、fumottoで今年春に開催された「十日市祭典2025」内の「時のしずく蚤の市」。その一角で見た“人とモノの対話”、そして会場全体のなんとも言えない空気が、藤巻さんの心に火をつけた。
「地元で、この空気をつくりたい」
そう語った彼の想いにfumottoスタッフも共鳴し、実行委員会が立ち上がった。
「売る」ではなく、「渡す」。
初開催となる今回、会場には古道具、陶器、植物、衣類、クラフト、グルメまで、44の出店者が集結。
「売る」ではなく「渡す」という温度で、それぞれが自分の“好き”を並べていった。
fumottoならではの取り組みとして、出店者全員にオリジナルピンバッジと虫よけスプレーを配布。“蚤の市の仲間”として迎える温かい仕掛けだった。
さらに、会場内で撮影した写真を投稿して楽しむフォトコンテストも開催。お客様と出店者の両方が、会場全体を“記録する目”として関わる仕組みが生まれた。
「モノが手から手へ渡るとき、人の物語も動くんです。」
“はじまり”の手ざわり
運営は決して簡単ではなかった。
天候、搬入動線、出店レイアウト、どれもが初挑戦。それでも実行委員とfumottoスタッフは、試行錯誤を重ねながら前に進んだ。
「できるかどうかじゃなく、やりたいかどうか」
その気持ちがすべての原動力でした。
やがて会場にお客様が流れ込み、静かに息づくようにマーケットが動き出した。古びた照明を磨く人、カップを手に取って笑う人、子どもがブリキのおもちゃを選びながら親と会話する姿。
そこには“はじまりの朝”ならではのやわらかい熱があった。
未来へ続く“手のぬくもり”
vol.0001は、まだ小さな一歩かもしれない。
でも、そこに確かに生まれた“手のぬくもり”が、これからの南プス蚤の市を育てていく。
「このふもとで、モノと人がゆるやかにつながる風景を
これからも残していきたい。」
藤巻さんの言葉が、会場の空気に溶けていった。fumottoの芝生に風が吹き抜け、小さな木箱の上の古道具たちが、また新しい物語を待っている。
次回開催予定:2026年10月10日(土) 9:30~15:30@fumotto
「“時のしずく”を感じた瞬間にすべてが始まりました。」 ― 南プス蚤の市実行委員会 藤巻さん
(素敵なハットとオリジナル黒Tシャツのお背中が藤巻さんです)